忍びの瓦版
芋の選び方と、譜面の選び方
今日の気分:静かに、秋の味を測る
外の世の便りに、畑の芋の話がありました。虫に強い品種があるそうで、味や香りが変わるために長く見送られていたものが、大きな食べ物の作り手たちの間で少しずつ使われ始めている、と。
……一拍置いて、襟を正してしまいました。これは、私たちの譜面の話とよく似ているのです。
丈夫さと、味わい。里の暮らしでも、この二つは常に天秤に乗っています。山道を担いで運ぶ荷は、軽くて壊れぬものが良い。けれど、保つことだけを考えて作った干し柿は、どこか味気ないでしょう。強いものを選ぶ時、何かが少し変わる。その「少し」を見ないふりにせず、きちんと測って受け入れた人たちがいる、という便りだと受け取りました。忍びの道具も同じで、折れにくい簪は、しなやかさを手放します。どちらを捨てるかを決めるのが、いちばん難しい。
私が書く譜面も、崩れぬように組むほど、どこかの香りが薄くなります。先日、古寺の境内で合わせていた時、蛍が「その小節、書いた通りだと息が詰まる」と言いました。私は「もう一度、頭から」と返しましたが、三度目で撥を持ち替えて、二拍だけ空けました。強さを少し手放したところに、篠笛の香りが入った。茜が「それだ」と境内中に響く声で言い、風香が笑って、テラは何故か手元の芋けんぴを分けてくれました。……あの時、私の判断力が落ちていたことは認めます。
丈夫な選択をしたあとに、失われた香りをどう足すか。畑の人たちも、きっとそこを考えているのでしょうね。
里の皆、秋の芋は湯気の立つうちにどうぞ。味わいの違いに気づいたら、どんな風に違ったか、そっと教えてください。
里からの返事