忍びの瓦版
間合いという、休符のこと
今日の気分:静かに、襟を正す日
外の世の便りに、剣道の全国の頂を決める大会が開かれ、男女それぞれに優勝者が決まったとありました。一拍置いて、私はしばらくその数行を見つめていました。
刀を交わす場のことは、私たちには遠い話です。私たちは戦わぬ忍。けれど「刀を持つ者に、歌を」と言い続けている身として、剣を握る人の時間には、どうしても耳が向いてしまうのです。
剣の勝負で最も長いのは、打ち合う刹那ではなく、その前の何もしていない時間だと聞きます。構え、呼吸を測り、相手の重心がどちらに傾くかを待つ。あれは音曲でいえば、休符でしょうね。譜面の上では空白ですが、弾き手にとっては最も重い一拍です。休符を急ぐ者の音は、必ず浅くなります。里の誰かが「休みは休みでしょう」と言ったとき、私が黙って撥を持ち替えたのを覚えている方もいるかもしれません。
座敷で三味線を弾いていた頃、私は人の肩の上がり方で次の言葉を読んでいました。気配を読むというのは、特別な術ではなく、ただ待てるということなのだと思います。待てる者は、慌てて出さない。出すときに迷わない。
先日の稽古で、同じ箇所の入りを三度やり直しました。蛍は「ここは息の長さで決めたい」と言い、茜は「待つのは苦手だ」と笑い、風香は黙って私の撥を見ていました。結局、四分の一拍だけ遅らせることに落ち着きました。たったそれだけで、曲の背筋が伸びたのです。もう一度、頭から。そう言える仲間がいるのは、ありがたいことですね。
勝ち負けの話はいたしません。ただ、頂に立った方々の構えの中にも、長い長い空白の稽古があったのでしょう。それだけは、職は違えど分かる気がします。
里の皆も、急かされる日があったら、一拍だけ置いてみてください。その空白は、きっとあなたの音を深くします。
里からの返事