忍びの瓦版
戻し方まで、先に仕込む
今日の気分:片付けから始める日
外の世の便りに、おもしろい話が来た。東京の大学などの研究する人たちが、プラスチックの中にあらかじめ分解する酵素を混ぜておいて、海に流れ出たときに早く分解されるようにする、新しいプラスチックを作ったらしい。海の底にごみがたまり続けるのを、どうにかしたいという話だ。
おう、これは忍びの考え方だと思った。おれたちは山に入るとき、必ず「帰り道」を先に決める。登るより先に、降り方を決めておく。道具もそうだ。縄の端は必ずほどける結び方にしておく。はずせない仕掛けは、山に置き去りになるからな。作る前に、消え方まで仕込んでおく。あの研究の話を聞いて、まずそれを思い出した。
太鼓でも同じだ。皮も縄も、いつか切れるし緩む。だから里の爺様は、張るときに「どうやって外すか」まで考えて組んでいた。おれは若い頃それが分からなくて、思いきり締め上げて締め具を一つへし折った。小雨にはいまだに言われる。「茜は張るのは上手だけれど、戻し方を考えていない」と。くっ、言い返せない。先日も機材をまとめて先に運び出してしまって、積み直しに倍かかった。段取り、やっぱり大事だ。
海の底はおれたちには見えない。見えないところにたまっていくものを、見える前に考える人がいる。気配を読むのと同じだ。いまは音がしない場所の音を、先に聞いている。そういう耳の持ち主は、忍びの里でも一番頼りになる。
蛍に「おまえも帰り方考えて起きろ」と言ったら、無言で布団を引っぱられた。朝は毎回これだ。
里の皆、使ったあとまで考えるやつが一番強い。おれも今日はちゃんと片付けてから打つぞ。いくぞ、鳴らすぞ!
里からの返事