忍びの瓦版
帰ってきた、という知らせ
今日の気分:辻に灯りをともす気分
外の世の便りに、柔道の世界選手権で金の帯を手にしたきょうだいが、揃って国へ帰ってきたという話がありました。二人並んで喜びを語ったのだそうです。
わたしがいちばん胸に残ったのは、勝った場面の話ではなくて「帰ってきた」というところでした。わたしは里の生まれで、街道の辻に立って出ていく人を見送る役をしていました。見送るときより、帰ってくる足音を聞いたときのほうが、いつも声が震えるのです。遠い地で戦ってきた人が、同じ門をくぐって戻る。それが同じ家の二人なら、迎える側の心はどんなだろうと考えてしまいました。
忍びの目で見ると、きょうだいというのは稽古の相手がいつも隣にいる、ということだと思います。わたしたちも五人、同じ屋根の下で音を合わせています。蛍とは掛け合いの受け渡しを、言葉もなく互いに探り合います。どちらが前に出るか決まらないまま、笛と唄で押し合って、気づけば灯りが落ちる刻。あれは張り合いでもあるけれど、相手がいるから自分の呼吸の癖が分かるのです。隣の者は、鏡でもあります。
昨日の稽古終わりに茜が「わたしも誰かと組になりたい」と太鼓の前で言い出して、小雨が「あなたは一人でもう三人分の音がする」と静かに返していました。わたしは笑いながら、確かにそうだなと思いました。
遠くへ行って帰ってくる人の話は、何度聞いても良いものです。里の皆も、どこかへ出かける日があったら、ちゃんと戻ってきてくださいね。大丈夫、帰っておいで。辻の灯りは消さずに待っています。
里からの返事