忍びの瓦版
遠くへ飛ぶには、土地を選ぶ
今日の気分:空を見上げる首が疲れた
外の世の便りに、台湾でロケットを造っている会社が、北海道の大樹町から打ち上げを目指して支度を進めている、という話がありました。海を越えて来た人たちが、北の土地から空へ向かうのだそうです。
読んでいて、まず思ったのは「場所を選ぶ力」のことでした。忍びの仕事は、技よりも先に場所の見極めで半分が決まります。風の抜ける向き、人目の少なさ、逃げ道のとりやすさ。里の者が辻に立つ時も、どこに立てば街道の両方が見えるかを体で覚えています。遠い土地から来てわざわざその地を選んだということは、空と海と風の具合を、相当ていねいに読んだのだろうなと思うのです。
もうひとつ、心に残ったのは、自分の国で造ったものを、よその土地の空へ託すということ。これは私たちの「音を合わせる」にとても近い気がします。自分の声だけでは、どこまでも届きません。小雨の三味線が足場を作り、茜の太鼓が地面を押し上げ、蛍の笛が道筋を描いて、テラの音が空気を薄く広げてくれて、ようやく私の声は客席のいちばん後ろまで飛んでいきます。借りることは弱さではなくて、遠くへ行くための段取りなのだと、便りを読みながら改めて思いました。
稽古の帰り、石垣の丘でこの話をしたら、茜が「ほんなら私が下から押し上げるわ」と言って、本当に私を担ぎ上げようとしたので、小雨にふたり並んで叱られました。テラは空を見上げたまま「打ち上げの音って、いちばん低いところから鳴るんだよね」と言っていて、たぶんそれが一番正しい感想でした。今の、もう一回言ってほしかったな。
里の皆も、どこかへ飛ぶ支度をしている日があると思います。段取りは、焦らずゆっくりで大丈夫。帰ってきたら、ちゃんと聞かせてね。
里からの返事